夜雨

一夜分の歴史  中原 中也

その夜は雨が、泣くやうに降つていました。
瓦はパリパリ、煎餅かなんぞのやうに、
割れ易いものの音を立てていました。
梅の樹に溜つた雨滴は、風が襲ふと、
他の樹々のよりも荒つぽい音で、
庭土の上に落ちていました。

コーヒーに少し砂糖を多い目に入れ、
ゆつくりと掻き混ぜて、さてと私は飲むのでありました。
と、そのやうな一夜が在つたといふこと、
明らかにそれは私の境涯の或る一頁であり、
それを記憶するものはただこの私だけであり、
その私も、やがては死んでゆくといふこと、
それは分り切ったことながら、また驚くべきことであり、
而も驚いたつて何の足しにもならぬといふこと・・・

雨は、泣くやうに降っていました。

梅の樹に溜つた雨滴は、他の樹々に溜つたのよりも、
風が吹くたび、荒つぽい音を立てて落ちていました。
DSCN3219_convert_20160313182739.jpg


一昨年の社員旅行で買った詩集を、まだ読んでいる。
詩はゆっくり
行きつ戻りつ
雨の夜に最適
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